通学路の魔法

通学路にはトレーニングがある。夢がある。孤独も嫉妬もある。つまり魔法がある。

ドン、ドン、ドン…とリズミカルな音が窓の外から響いてくる。住むアパートの前の道らしい。規則的な音って耳にさわる。ましてこっちは文が書けなくてイライラしているから余計に。なんだろう?とサッシを開けてベランダから覗くと、女子だった。

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バスケットボールをついていた。ドリブルしながら通学しているんだ。この道の先には県立高校がある。駅を降りて15分くらいかかる。女子バスケ部員なんだろう。片時もボールを離さないなんて、やるなあ。

そういえば前に、この道にはコーラス部も歩いていた。ハーモニーが聞こえてきたのだ。見ると3人が歌いながら登校していた。車もバンバン通る道だから気をつけてほしいけれど、通学路って悪くない。

ぼくは学区の隅っこに住んでいたから、小学校の頃からずいぶん長い距離を歩いた。今どきほど集団登校がコうるさくないので、せいぜい友だち2-3人と行くか、ひとりの時が多かった。好き好んで、両手を伸ばすと壁と壁につく狭い路地を歩いた。猫でも横切るとほんとに嬉しかった。中学の頃、この路地でカップルを見かけた。同級生、同じクラスの男女。公認のカップルだった。羨ましくて死にたくなったので、別の路地を大回りして帰った。

たぶんぼくが人生でも大通りが歩けないのは、この時以来かもしれない。

思い起こせば、小学校の校門からたった100mの歯科医の家の息子もいた。彼は可哀想だったな、おしゃべりも孤独もなかったんだから。でも、速攻帰って塾に行かなきゃならないんだからと彼は言った。確かに通学なんて無駄といえば無駄だ。

いや待て。そんなことはない。通学路には思索がある。算数の25点の答案用紙を母に見せるべきか。逆上がりはどうしたらできるのか。あの子に会ったらどうしよう。あいつを倒すためには回し蹴りか。いろんなことを考えたもんだ。

今朝のバスケ女子もドリブルしながらきっと考えている。あたし上背ないからポイントガードだよな。でもスピードさえあればさ。ロングも上手くなりたいし。

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通学路は夢を膨らませる道。一歩一歩、ひとつきひとつき現実に歩む道。がんばれよ女子、ベランダから魔法をかけてやる。がんばれよその他大勢の通学者たちよ。

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