ひとり言マスク

ぼくはひとり言マスクをつけて散歩しようと思った。

hitorigto

きっかけは、散歩ならひとり言が誰にも聴こえないだろうとタカをくくったのだ。だがすっと横丁から出てくる人に聞かれちまった。仕事場では「うるさい!」と言われる。「何ひとりで喋ってるの!お客さんが“奥に誰かいるんですね”と言ってるわ」

誰もいない。ぼくだけだ。そこでマスクをしたら誰にも聴こえないだろうと思って喋ってみたが、案外聞こえていた。電車の中で睨まれ、道で怪しまれ、会社で起こられ…。この国では安心してひとり言が言えない。

だから『ひとり言マスク』を開発した。ひとり言を外に漏らさず、どんどん吸収するマスクである。素材も構造もひみちゅ。

このマスクをすれば、どんなにネガティブなことも、どんな愚痴も、どんな怒りも、どんどん吸収してくれる。外部にも漏れることがない。しかも「喋り捨て」なので、いっぱいになったら捨てればよろしい。ポイっとゴミ箱に捨てると、ひとり言でゴミ箱がわさわさして悶える。

「わかってねえな、バカ部長」「なんであいつを認めて、オレが認められないんだ」「なんで私いじめられるの!」「なんてぼくはアホウなのか!」「あ、可愛い子」「ち、乗り過ごしちまった」と、わさわさするので…

おだまり!

と言うと、じきに静かになる。

この発明を気に入ったネットシステム開発者から「“つながる“ひとり言マスクを作らせてほしい」と申し出があった。試作品はひとり言が自動的にウエブにアップされるものだ。「商品名はトーク•アローンです」

試作品を試験頒布すると、驚くべきことにひとり言が会話になっていった。ひとり言同士を結びつけてゆくと「ひとり言友だち」が広がった。さらに言葉だけでなくメロディも口ずさまれた。それにひとり言の詩がつけられて歌ができた。ひとり言ソングである。「ひとりぼっちのぉ♪夜ぅ〜♪」

ある医療者はひとり言の重さを計測した。10グラムから35グラムの重さがあった。
ひとり言にはそれなりに重みがあるとわかりました」と口腔神経学会で発表した。

以上、ひとり言のホラでした(笑)

しかしこの世の中、寂しいとかちくしょうとか殺してやるとか、ひとり言で済ませばいいのに、それが悪意となり狂信となって、銃を取り人を殺し、クルマで無差別に轢く。そんなひどいこともある。

ひとり言、侮るべからず。マスクにくっつけてひっそりと捨てちまおう。

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