患者の名前

ある医師が個性的な名前ー“キラキラネーム”や“DQNネーム”というーを批判するツィートをして、「名付けは自由だ」「ネットの影響を考えて」という批判にさらされた。医師の想いが伝わってないな、と不安になった。

キラキラネームとは、たとえば「凸」を「てとりす」、「礼」を「ぺこ」と呼ぶ変な読みや変な字である。その違和感はともかく、一刻を争う小児救急医療の現場。医師は「名前の確認に時間がかかるのは命に関わる」「救急現場の苦労を知ってほしい」と言う。

「ネットへの意見は控えろ」というのは論外だが、医療と人の名前の結びつきは実に深い。それを8月20日発売の『ドクターズ•マガジン2013年9月号』は2つの話題で伝えている。

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ぼくが書いた「ドクターの肖像」インタビューの小野裕之医師(静岡県立がんセンター副院長)のエピソードに、胃がんの内視鏡手術をした患者が3日目に容態が悪化し大出血をした話がある。

急いで駆けつけた小野医師が到着すると血圧は振れず、顔面は真っ白で呼吸もあぶない。ポンピングで輸血する一方、内視鏡を入れて止血をした。その最中「○○さん!○○さん!聞こえますか!」と必死で呼びかけた。幸運にも患者は一命をとりとめた。回復後、患者はこう言った。

川渡りそうになったら先生の声が聞こえたよ

名前を呼ぶ。それは生死に関わるのだ。

小児救急医の患者はほとんどが初診。担ぎ込まれた子の名前が確認できるものが「ふりがなの無い名札」だったらどうなのか。帰ってこいと言えないじゃないか。さらに「ドクターのオピニオン」のページで、畑野研太郎氏(国立療養所邑久光明園長)が書いている。

ハンセン病(ライ病)の患者は、その病気の特性から家族が差別にあう。それを避けるため患者は戸籍を抜いて入園し、園内では本名でない“園名”をかたるという。病気により名前がなくなるのだ。名も無く闘病するのだ。療養所の職員たちは人権剥奪に無力だったことを無念に思う。

個人情報保護という法のもとに、病室の名札から患者名が削除された時期があった。間違いがあったらどうするのだろう?

医療者は患者のために、社会のさまざまな変化や流れにさらされながら、つねに求めていることがある。名前のある人間で生き続けてもらうことだ。

ドクターズ•マガジン、杉浦編集長が「物理的には軽い雑誌」(笑)と言うが(36ページ立て)内容はズシンとくる。医療者以外にも読んでもらいたい。

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