勝負色

昨日、タイフェスティバルでcherryさんと代々木公園で待ち合わせたとき、「赤いヒトを探したんだけど見つからなかった」と言われた。ぼくがたいてい赤い服を着ているからだ。あの人ごみで赤い服のオトコを探す…まさにウォーリーを探せ!だ(笑)。

たしかにぼくはが多い。内でも赤、外でも赤、である。

【向田邦子さんの勝負服】
明日は展示会準備と会議で1日忙しいし、水曜日は某イベントで夜までかかる。火曜と木曜が〆切の原稿ふたつを上げればこっちのもん。だから今日はおのれを机に縛り付けてやっていた。ところが縛りつけても引田天功も真っ青、ほどいてすぐに肉体離脱するおのれがいるのだ。さてどうしたものか…困った。

思い出したのは“勝負服”だ。


ルパシカの例 引用元

向田邦子さんはエッセイ「勝負服」で、紫式部は十二単衣で『源氏物語』を書いたのか、トルストイは『戦争と平和』をルパシカを着てたか、ヘミングウェイはサファリスーツか自慢の上半身裸体か、などと綴ったあとー

古今東西の大文豪のすぐあとに、三文ライターの我が身をならべるのは誠におこがましいのだが、私は仕事をする時は勝負服を着用する。(『眠る盃』「勝負服」より)

勝負服、すなわちジョッキーの服である。「赤と黄色のダンダラ縞や銭湯のタイル顔負けの大きなチェッカー」の服。なぜ彼女はジョッキー服なのか?

人気TV番組の放送作家だった向田邦子さんは「スピード」がモットー。第四コーナーの向こうに〆切日が見えると、猛然と1時間に原稿用紙10枚(!)ダッシュで書きだした。ムチ打ってハイヨー!なのだ。現実にはジョッキー服は生活上いろいろムリもあるので、地味な色のセーターやブラウスが勝負服だった。それも大きな衿は揺れるからNG、袖口にボタンもカチカチするのでNGと条件がたくさんあった。いつも最後の直線を突っ走る服で書いていたのだ。

勝負服とTVは似ていると、向田さんは次のように鮮やかにしめる。

視聴率というウサン臭いもので計られるバカバカしさ。一瞬のうちに消えてしまう潔さとはかなさ。テレビと競馬は似てなくもないのである。(111)

【三銭ライターの勝負色】
思えばスーツを着なくなって何年にもなる。あれはあれで疾走するサラリーマンの仕事着である。ワイシャツをパン!と着てネクタイを締めれば、1日の競争が始まる。野球選手やサッカー選手のロッカールームには、勝負に向かって「顔つきが変わる」儀式がある。

それに比べてぼくは、寝て起きてダランと着て書いて、ジーンズ履いてギャラリーに行って、帰って脱いで短パンになって書いて寝る…。着替え時点で勝負が無さすぎである。これはいかん。

メンコ=顔のマスク 引用元

プロの向田さんが三文ライターなら、ぼくは三銭ライター。ジョッキー服を着る資格はなく、競走馬のメンコをかむって、まっすぐ前に向かって書け。服も肉も心も赤く燃えろ。今勝負しないでいつする。だからお風呂に出てまた赤を着てる(笑)。赤はぼくの「勝負色」なのだ。


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