三廊下の家が思い出させること

現代の住宅が忘れたものはたくさんある。

気密性を高めるあまり、風通しが悪くなって結露やカビの発生しやすくなった間取り。収納スペースを軽視して、モノが溢れる室内。狭い廊下が一本真ん中を走るマンションでは、車椅子さえ満足に通れない。段差もたくさんある。

そして“中廊下”という昔の住宅にあったプライバシーと独立性をまもるスペースも、とんと失われた。建築家坂牛卓/taku sakaushiさんの『三廊下の家/three corridors house』はそれを取り戻した。

the basic scheme that the design takes off from is a style of traditional japanese dwelling which consists of a central corridor that divides the domestic programs according to ideal views and position. this organization allowed for an efficient form of circulation that also provided a simple and intuitive layout.引用元

「このデザインが目指す基本的なスキームは日本家屋がもっていた伝統的な住まい方である。中央の廊下が理想的な眺めと位置を提供するため住まいを分割する。その組織体は換気の効率も高め、シンプルな直感レイアウトを提供している」

そして間取り図は次の画像。

連続性と独立性がうまくかみ合っている。

坂牛氏はこう語る。

この住宅は平屋で43坪。3人で住むにはかなりゆったりしている。廊下が東西方向に3本通っているのが特徴である。この3本の廊下はクライアントの住み慣れた家の形式を踏襲したものである。中廊下は日本の明治後半、客人と住人のプライバシー確保のために生み出された。しかしその後都市部の狭小地からは消滅した。そして田舎のゆったりした敷地にのみ残り、クライアントの記憶の中にも染みついている。そんな記憶に少々過剰な(過激ではない)味付けをしたのがこのプランだ。(引用元は氏のブログhttp://ofda.jp/sakaushi/diary/2011/02/

甲府という地方が、有利な広さを確保できる要素ではあっただろうが、なんとも羨ましいのが「平屋建て」というぜいたくさ。だからこそリビングからダイニングへ、そして日本間へ部屋を連続させることができた。それも中廊下によって仕切ることも可能。

それは荻窪にあった私の祖父母の家を思い出させた。その平家の間取りは、廊下が各室(居間、日本間、台所、客間など)をぐるりと一周して囲み、また繋ぐように作られていた。各室からは庭や裏庭が見える。ぐるりの廊下が中廊下のような機能を果たしていた。戦前の住宅であった。

気になったのがスタディルームとダイニングルームの壁にある「小窓」。上の画像の左のブロックの四角い窓。何に使うのだろうか?「ご飯できたわよ」「行くよ」というコミュニケーションなのか、ご飯の差し入れ口なのか(笑)いずれにせよ、なんか楽しさもある。

今時住宅を作るとき、廊下という「無駄なスペース」から発想をすることはないだろう。だがそれは無駄ではなく、家族と家族、家族と客人を独立させための緩衝スペースであり、連携させるための結合スペースなのである。物置でもなければ出入り口の延長でもなかった。家は家族をつくり、人を育てるものだった。

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