くじらが歌える間に変革を。

今日は、電子出版に深く関係のある会社の社長さんにお話を伺っていた。その話はプリバリインの連載向けなので今は書けないが、出版業界・印刷業界の行く末について、ずいぶんと刺激を頂いた。話の中でチラリとあの“G2010”の話が出た。


G2010とは村上龍氏とグリオ(村上氏のメルマガ配信等を手がける)の共同出資の電子書籍新会社20作品を発行して初年度1億円を目指すと発表した。ラインナップはiPad版が先行した『歌うくじら』、ぼくも初版本を持っている『限りなく透明に近いブルー』(生原稿も見られる)、よしもとばななさんの『Banakobanashi/ばなこばなし』など。単純に割り算すると@500万円。目玉が話題作『歌うくじら』だとしても、「500万円どうかね」「たいへんですよね」と話した。


【電子でなぜ半額になるのか?】
『歌うくじら』はそのイマジネーションが壮大なスケールで広がる評判の作品。すでにiPadとiPhoneで10000ダウンロードを超えているそうで、単純計算15百万円の売上である。まずは良き日の出航だろうか。

ぼくが気になったのは、電子書籍の価値、つまり価格。村上龍氏が書かれた設立趣意の中に次のくだりがある。

紙だと上下巻で間違いなく3000円以上の定価になるのですが、アプリとしての表示ではボリュームを示せないので、適正価格がわかりづらいのです。結局、紙のだいたい半額1500円なら堂々と売れるのではないかということで価格が決まりました。引用元

印刷の単行本は上下各巻1,680円であるから半額。なぜ電子だと半額なのか?電子にしかない価値としてさまざまな趣向が凝らされており、坂本龍一さんの音楽もついてくる。それがなぜ半額なのか?紙じゃないと安いというところに、根本的な疑問がある。これは連載で書く。

【アンマッチの既存ビジネス】
もうひとつは、村上氏の独立会社設立の理由

わたしは、電子書籍の制作を進めるに当たって、出版社と組むのは合理的ではないと思うようになりました。理由は大きく2つあります。1つは、多くの出版社は自社で電子化する知識と技術を持っていないということです。「出版社による電子化」のほとんどは、電子化専門会社への「外注」です。(中略)2つ目の理由は、ある出版社と組んで電子化を行うと、他社の既刊本は扱えないということでした。引用元

電子化ならではのアイデア・制作力は今の出版社にない。その通りだろう。ふたつ目は、日本の電子化が業界タテ割で進んでいること。過渡期だから仕方ない面はあるけれど、新しい読者の獲得を業界を上げてという視点が見えない。次のニュースが踊っているのに。これも連載でさらにツっこむ。

【出版業界総倒れ】

出版大手10社中8社が減収に 「出版・取次・書店総倒れ」 帝国データバンク調査
帝国データバンクが11月1日まとめた出版業界の2009年度決算調査によると、出版社の売上高上位10社のうち、8社が減収だった。出版、取次、書店の3業種とも、2期連続減収の企業が2期連続増収の企業を上回っている状態で、「出版業界総倒れの様相を呈している」という。引用元


黒字のところも出版以外で収益を出していると言われる。こんな状況なのに“タテ割”を気にするのはなぜなのだろうか。村上氏が書くように、電子書籍時代にスキルが無いことで途方に暮れているのだろうか。まるで経営をしているように見えない。

その中で幻冬舎は「経営をしている」マネジメント・バイアウト(MBO、経営陣による買収)を実施して上場廃止、経営と資本を一体化させて、この大きな電子の波に対応する。“厳冬”下、このくらいでないと生き残れないのだろう。

もうひとつ、読者人の意識も旧態然だ。

電子化の作業は刺激的でした。ほとんど毎日会ってアイデアを出し合い、数日後にデモ画面を見て、修正点を確認し合うというスリリングな日々が続きましたが、坂本龍一のオリジナル音楽が届いたとき、わたしたち制作スタッフの興奮はさらに高まりました。引用元同

これは村上龍さんの『くじら』を電子化するプロセスでの感想である。作り手がこれだけイキごんでも、まだ世の中は「電子書籍=軽い・安い」意識なのだ。電子化するという意味はそんなヤワなことではない。読者にも想像力が足りないのが実情でしょう。iPadが「リーダーには重くて使えない」という人が増えたようだが、何にもわかっちゃいないなあ。このことはビジネスメディア誠にも書きたい。

【くじらが歌える間に】
業界が電子化のフォーマット問題にかまけている間に、もっと大きなことが起きている。

電子化に対応できない事業・流通チャネル・人材スキル、(付加価値が付くのになぜか)安くなる商品、誰にもわかっていない電子読書消費スタイル。海が干上がり、くじらが歌えなくなる前に、知恵を出し合わないとダメだと思う。

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