追悼 ケネディ大統領の名スピーチライター、Mr.ソレンセン

この英語の本だけは何度も読んだ。何度も辞書を引いた。何行も書き写した。こ汚い本だけど、未だに何カ所にも付箋が貼ってある。


LET THE WORD GO FORTH”、1947年から1963年までの故ケネディ大統領のスピーチ、声明、文書を編纂した本。編纂したのはTheodore C.Sorensen/セオドア・ソレンセン氏。

ケネディ元米大統領の側近で名スピーチライターとして知られたセオドア・ソレンセン元大統領特別顧問が31 日、ニューヨーク市で脳卒中の合併症で死去した。82歳だった。米国民の心に刻まれるケネディ氏の数々の名演説を担当。生前のケネディ氏は「私の知的血液バンク」とソレンセン氏を評していた。引用


朝一番で、この本の編者で故ケネディ大統領(JFK)のスピーチライターだったソレンセン氏の死亡記事を読んだ。JFKの参謀であり、私の英文の師匠でもあった。こういう本を読んだから、ぼくはあんがい語彙に自信がついた。ちなみに知的血液バンクとは“intellectual blood bank”である。ぼくにとってJFKのことばは“English blood bank”である。こんな名文を読んだのに、どうして英語がヘタなんだろう。

今日は追悼の意を表して、JFKとソレンセン氏が創り上げたことばを取りあげてみたい。

【The Inaugural Address】
We dare not forget today that we are the heirs of that first revolution. Let the word go forth from this time and place, to friend and foe alike, that the torch has been passed to a new generation of Americans (The Inaugural Address)

今日われわれは、自分たちがその最初の革命の継承者であることを忘れてはならない。今この時、この場所から、友人に対しても敵に対しても、次の言葉を伝えよう。すなわち、たいまつは米国民の新しい世代に引き継がれた、と。訳は米国大使館より

“Let the word go forth from this time and place,” この一行、“the word go forth”を直訳すれば“ことばを先に行かせる”である。有言実行というよりも緒言(しょげん)実行といった方がいいだろう。ことばを先において、国民を動かす。そういう政権だったと思うし、それを一行で表現したことばであった。どこへ動かしたのか。

Together let us explore the stars, conquer the deserts, eradicate disease, tap the ocean depths and encourage the arts and commerce.
一緒に天体を探査し、砂漠を征服し、病気を根絶させ、深海を開発し、芸術と通商を奨励しようではないか。

explore the starsはもちろんアポロ計画になるし、この一文で60年代の国家の開発方針が定まったといってもいい。あのベトナム戦争という誤算を除いてだが。このくだりは、英語の発音でも一番好きだ。イントネーション、そして頭韻がすごく気持ちいい。ケネディ演説のテープを聴く機会があれば、耳を澄ましてほしい。脇道にそれるが、アポロ計画を推進するJFKのことばを引用しよう。

We have a long way to go. Many weeks and months and years of long, tedious work lie ahead. There will be setbacks and frustrations and disappointments. There will be, as there always are, pressures in this country to do less in this area as in so many others, and temptations to do something else that is perhaps easier. But this research here must go on. This space effort must go on.
長い道のりを歩むことになる。何週間も何ヶ月も何年も退屈な仕事が待っている。後退もあれば欲求不満も失望もある。この国の、この宇宙という分野への期待というプレッシャーから逃げたくなるはずだ。もっと簡単な仕事をする誘惑もある。だがこの探索は続けなければならない。宇宙への努力は継続しなければならない。(拙訳 Aerospace Medical Health Centerでのことば)

とても断固たる口調だ。国を率いるリーダーシップとはこういうものかと思わせる。だから献身したいひとびとが、全国各地からワシントンに向かったのだ。

And so, my fellow Americans: ask not what your country can do for you–ask what you can do for your country.
だからこそ、米国民の同胞の皆さん、あなたの国があなたのために何ができるかを問わないでほしい。あなたがあなたの国のために何ができるかを問うてほしい。
訳す必要がないこの有名な一文は、やはりソレンセン氏が書いたといわれる。この一文で国のために尽くそうという若者たちが後を絶たなかった。ぼくもそんな時代に生きたかった。

【 If we are weak, words will be of no help】
ソレンセン氏の功績の大きさ、彼はスピーチを書いたというよりも、ことばで意志を伝え世界を動かした。同時に、ことばの限界もわかっていた。

Words alone are not enough….Where our strength and determination are clear, our words need merely to convey conviction, not belligerence. If we are strong, our strength will speak for itself. If we are weak, words will be of no help.
ことばだけでは十分ではない。我々の力と決意が明瞭であれば、ことばは確信を伝えることですみ諍いは生まない。もしも我々が強ければ、我々の持つ力自体が話しだす。もしも弱ければ、ことばは助けにはならない。(拙訳)

これは1963年11月22日、ダラスでの語られなかった演説の草稿である。ことばが鋭利であったが故に、JFKは暗殺されたとも思えるのである。

“Don’t teach my boy poetry; he is going to stand for Parliament.” Well, perhaps she was right – but if more politicians knew poetry, and more poets knew politics, I am convinced the world would be a little better place in which to live on this commencement day of 1956.
「ある母親がこう言いました。私の子に詩を教えないでください、この子は議会に出るのですから。母は正しかったかもしれない。だがもしも、もっとたくさんの政治家が詩を知り、もっとたくさんの詩人が政治を知っていれば、世界は、卒業式を迎えるこの場は、もっと良い場所になると信じます」

これはJFKが上院議員時代のハーバード大学での卒業式での演説(1956年)。日本の政治家ももっとことばをたいせつにしてほしい。国会中継でのヤジの汚さは品位のカケラもない。首相の所信表明も方針はあっても心にのこることばがない。日本の政治家のことばで覚えているのは吉田茂氏の「バカヤロー」くらいだ。

菅首相にしても、中国との諍いを中国の故事でも引いて諌めることばを発していたなら素晴しかった。それができるスピーチライターがいたなら、と思うのだが。

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